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またひとつ、菓子業が静かに幕を下ろした 〜見えない企業の現実と、変化を恐れない経営〜

  • 執筆者の写真: 山根製菓
    山根製菓
  • 4月7日
  • 読了時間: 3分

更新日:4月18日


つい先日、長年地域で親しまれていたある菓子業の会社が廃業しました。社長の体調不良がきっかけだったそうです。事業承継がうまくいかず、惜しまれながらも静かに閉業。

売上や販路の規模で言えば、むしろ我々よりも広く、強い動きをしていた企業です。周囲から見れば、順調に経営されているように見えていたはず。しかし、企業というのは「外から見える姿」と「中で起きている現実」が大きく異なるということを、改めて痛感しました。

長く続いたデフレの時代、多くの中小企業は「価格を上げられない」中で、企業体力を徐々に奪われてきました。コストを下げ、無理をしながらでも安定供給を続けてきた。経営者は「続けること」そのものが使命のように、身を削り続けてきたわけです。

そして今、急激なインフレ。原材料費の高騰、エネルギーコスト、人件費のすべてが急上昇する中、デフレマインドを引きずったままの体制では対応が間に合ないと思います。

チャレンジすべきときに、思考が止まり、行動が鈍り、変化への一歩が踏み出せない。その間にも、資金は流出し、人材は離れ、販路は狭まり……。

本来であれば、次の手を打つための時間と資金が必要なはずですが、そうした余白を持てないのが今の中小企業の実情です。


「中から見える現実」と向き合う

私たちもまた、小さな菓子製造業を営む身として、例外ではありません。

経営とは“見える数字”だけでは語れません。

設備の老朽化、社員の高齢化、新規販路開拓の難しさ。

その一つひとつが見えない圧力となり、毎日の意思決定に重くのしかかります。

しかし、だからこそ、変化を前提とした思考と行動が欠かせない時代に入っていると感じています。

・決断を先延ばしにしないこと。

・理想と現実の間に橋をかけること。

・何よりも、会社に未来があると信じること。

私たちが今ここで立ち止まらず、柔軟に舵を切ることは、社会の変化が速い現代において

とても大切な事だと思います。


共有からはじまる連携へ

経営の課題は、ひとつの会社だけでは乗り越えられない事もあります。

地域の中で、業界の中で、知恵や資源を持ち寄り、連携することも重要になってきています。もちろん、資金面でも。だからこそ、商品づくりのノウハウをシェアすることや、物流や原材料調達の共同化といった具体的な連携も不可欠です。

困った時に「声をかけられる関係性」を築くこと、それ自体が大切な経営資源であると感じます。

かつては、社内の情報やノウハウを他社に伝えることは“ご法度”のように扱われていました。しかし今や、インターネットを通じてあらゆる情報が自由に手に入る時代です。

そんな時代において、何を隠すかよりも、どう共有し、どう信頼関係を築くかの方が重要ではないでしょうか。

日々の業務に追われながらも、こうして菓子づくりという仕事を続けられていることに、

まずは深く感謝したいと思います。

多くの人に支えられ、原材料を届けてくれる方、商品を手に取ってくださるお客様、そして日々の製造を共にしてくれる仲間たち。そうしたすべての存在があって、今日も私たちは事業を営むことができています。

会社を続けるというのは、時に地味で、時に尊くて、時にしんどくて、

それでも楽しいと感じる営みの連続で

そんな変化の波の中で、今日も考え、動き、時に立ち止まりそしてまた動きながら、

私たちは前に進んでいく思考と努力を惜しまない会社になればと考えています。


                                    山根昌浩






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